七夕の日は、朝から家が静かでした。
みんな早い時間に出かけていて、昼を過ぎた頃に、汗だくで帰ってきます。
玄関には鎌とバケツとたわしが置かれて、外の水道で洗われる。
草の匂いがして、暑い、暑いと言いながら、みんな座り込んでいました。
私は子どもの頃、七夕と聞いて笹や短冊を思い浮かべたことがありません。
嫁ぎ先のお義母さんに「もうすぐ七夕だねー」と言われて、笹と短冊を思い浮かべた方。
残念ながら、それはロマンチックなお誘いではありません。
沖縄の七夕は、お墓掃除の日です。
暑い盛りの、けっこうな肉体労働のお知らせでした。
星祭りではなく、先祖供養の日
沖縄の七夕(タナバタ)は旧暦の7月7日に行います。
2026年は、8月19日(水)です。
新暦でやる本土の星祭りとは中身がまるで違って、旧盆の1週間ほど前に、ご先祖様へ「もうすぐお盆ですよ」とお知らせする仏事です。
もともと日本の七夕は、全国的にお盆を迎える準備の期間だったそうです。
明治に新暦が入って、本土ではお盆と切り離されて星祭りが主流になりました。
旧暦を大切にしてきた沖縄にだけ、本来の「盆の助走」としての七夕が残った。
沖縄が特殊なのではなくて、古い形が残っているほう、ということらしいです。
七夕の日にやること
お墓の掃除とご案内(ソーローウンケー)
夏の間に茂った草を刈って、墓石を洗って、清めたお墓の前で「旧盆の準備が整いました。どうぞお越しください」とご先祖様をご案内します。
供え物はお酒や花、お茶など簡素なもので大丈夫で、重箱は要りません。
仏壇の掃除
沖縄では普段、仏壇の中のものにみだりに触れないものとされていますが、七夕は例外です。
この日は仏具を取り出して、念入りに掃除できます。
お墓や仏壇の「大ごと」
七夕はヒーナシ(日無し)、神様の目が届かない日とされています。
だから、普段なら日取りを慎重に選ぶようなこと——お墓の修繕、仏壇の新調、それに墓じまいや仏壇じまいのような重い決断ごとも、この日なら遠慮なく行えると伝えられてきました。
行事を畳む相談をするのにも向いた日、ということになります。
丁寧に行う家では、朝にヒヌカン(火の神)へ報告してからお墓へ向かって、墓の守護神であるヒジャイガミを拝んでから掃除とご案内、帰宅後に仏壇へ報告、という流れになります。
ただ、ここに書いたのはあくまで一般的な形です。
やり方は地域や家、門中によって本当にさまざまで、墓掃除の習慣自体がほとんどない家もあります。
嫁いだ先のやり方は、その家の年長者に聞くのがいちばん確実だと思います。
誰が掃除するのか
私の実家では、墓掃除はもっぱら親世代と、家の男手の仕事でした。
周りを見ても、炎天下で草を刈るのは若めのおじさんたちの役目、という印象があります。
そして今の課題は、まさにここです。
その「若めのおじさん」が、どの家でも減っています。
親世代は高齢になって、子世代は本土へ出て、墓掃除の担い手から先に人手が足りなくなる。
旧盆の簡素化や墓じまいが進んでいるのは、実はウークイの晩ではなく、七夕の墓掃除のあたりから始まっているのかもしれません。
どうしても人手が足りない家には、墓掃除の代行サービスという選択肢もあります。
高齢の親だけで炎天下の作業をするくらいなら、頼むのは立派な判断だと思っています。
ご先祖様も、子孫が熱中症で倒れることまでは望んでいないはずですから。
七夕が来たら、旧盆はもう目の前です。
今年の七夕は8月19日。
そこから1週間で、旧盆が来ます。
七夕と聞いて笹を思い浮かべると同時に「お墓の掃除か」と思うのはうちなーんちゅだけかと思います。
これからもこの伝統は残るのかどうかは分かりませんが、永代供養が進んでいけばだんだんとなくなる行事なのかもしれません。
実際に行ってきた話はこちらに書きました。
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